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インドにて15(エピローグ)

  • kashiwagijunya
  • 2024年11月2日
  • 読了時間: 2分

その年の年末年始を僕はアシュラムで迎えた。


アシュラムに来て2カ月がたっていた。僕は帰国を考え始めていた。

旅はある時点を超えると惰性になり始める。


僕も当初の高揚した気分が薄れ、毎日学校に通うように習慣でアシュラムに行き続けるようになっていた。

それは僕だけでなく、長くアシュラムに滞在し続ける”主”のような人たちも同じであった。


アシュラムの中では大きな顔をできるが、帰国して社会にでれば、何者でもないのだ。

そんな気持ちが僕の中に広がり始めていた。


僕は帰国を決めた。




ルームシェアをしていたハリ・バクタや奥さんのヤーシャ、ミータにも帰国を伝えた。


いつも闇の両替を頼んでいた隣のアパートの旅行会社で航空券の手配をしてもらった。

この会社の受付のインド人の女の子は結構可愛い子で、僕の部屋に姉妹で和紙人形の作り方を習いに来たな。


親しくなったピアノ教師の女性も段々疎遠になって借りた本も返せなかった。


ミータとは最後まで折り合いが悪く、バクタはずっと煩い男だった。





部屋を引き払う日、アシュラムの最後の瞑想を終え、アパートに帰宅した。


リビングには誰もいなかった。その奥の僕の部屋の隣の扉が少し開いていた。


バクタの奥さんの野性的な美女のヤーシャが見知らぬ男と浮気をしていた。


いつものことなので、特に気に留めず、自分の部屋に入り帰国の準備をした。

と言っても10分もあれば十分だったが。


するとヤーシャがいつものごとく裸にローブ一枚の姿で僕の部屋に入ってきて、立膝をついて座った。

彼女は、僕がその日帰国することは知っていた。


静かにポツリポツリと、とりとめのない話をした。



最後にヤーシャは”Good bye. My quiet company” と一言いって僕をハグした。



僕は、”いつかまた、ここに戻ってこよう”と思った。。。   



 
 
 

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